その一
2歳くらいの可愛らしい女の子とお母さんが乗っかってきた。女の子はちっちゃいけど女の子らしく、たどたどしい言葉でおしゃべりをしていた。
そして運転士が女だと気付くとお母さんに
「おかあたん、おねえたんうんてんちたんだねぇ。おねえたんうんてんちたんだよ。」
おねえさんとか良く教育の行き届いてるお子様じゃあないかと思った次の瞬間、車内に響き渡る声で
「あっ!…………お…ばあたん……おねえたん??」
と戸惑いながら言い直した。
マジか??うーーーん、大正解っ!
あきらかに全員に聞こえているはずで無視できなくて
「あぁ、ダメだ無視できないっ! が、がんばりますっ!」
って言ったらお客様みんな一斉に笑ってくれたんだけど、女の子のお母さんだけが終始無言だった。
その二
横断歩道を、保育園のお散歩中なのであろう幼児の列が、男女ペアになって手を繋いで先生に守られながらぞろぞろと渡ってきた。
その中の一組の男の子の方がちょうど横断歩道を渡った辺りでコケた。
『あっ!コケた!』
って思ったら、女の子も手を繋いでたもんだから雪崩のように、組体操のウェイブのように続いて転んでしまった。
『あーぁ、こりゃ大泣きだぞ。大変だな。』
ってぼーっと考えてたら、一瞬ののち、顔を見合わせてゲラゲラと大笑いし出した。立ち上がってからも楽しそうにずっと二人で笑ってた。その見事なコケ方と意表をついたリアクションに私も釣られて笑いそうになって堪えるのが大変だった。
きっといっつも楽しい事いっぱいの中にいるんだろうなぁ、と思った。
その三
交通量の多い幹線道路に出るT字路に差し掛かると広い歩道の端にこれまた保育園の園児が10人くらいしゃがんで賑やかに笑い合ったりしてたんだけど、一人がこっちを指差して
「あっ!バスだ!」
みたいに言った。そしたらみんなが一斉に
「ぎゃーー!バスがきたぁぁぁぁぁ!!」
って感じで口々に悲鳴にも似た叫び声をあげて騒ぎ出した。もうこれは誇大とかじゃなくて、いや、あんたらバス見た事ないのか?ってくらい、マックのCMでハッピーセットのおもちゃに狂喜し、歓喜の声を上げる子供たちさながらに騒ぎ出した。
本当はかっこよくチャッと手を挙げて曲がりたかったのに信号に引っかかってしまった。この信号は長い。その間もぎゃーぎゃーとテンションそのまんまに手を振ってくるちびっこ達。しまいにゃバスに近付こうとして先生に止められたりしてる。
だんだん、自分がものすごい人気者になった気がしてきて、『あー、アイドルってこんな感じなのかなぁ』とかものすごい勘違いをしながらも軽く手を振ったり笑顔で会釈してるうちに信号が変わりそうになったので発車の準備して最後にもう1回去り際に手でも振っておくかと子供たちの方を見たら、もはや誰一人としてこっちを気にしている者はいなかった……。
ちびっこ達の関心事への移ろいの素早さを体感しつつ、とびっきりの笑顔を戻すタイミングを失った私は奇妙な笑顔のまんま交差点を曲がって行きましたとさ。
パパママおはようございます
今日は何からはじめよう♪
おしまい。