世の中の大抵の事は大したことない

なまけものが書きます

今さらですが……やっと『ソロモンの偽証』を読み終えました

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※ネタバレを含みます。これから読もうと思っている方はご注意くださいm(__)m

後輩のtomoちゃんにずーーーっと借りっぱなしだった『ソロモンの偽証』ようやく読み終わりました。長かった。だって、それ一冊でもけっこうな厚みがあるのに、それが全6巻ですよ。しかも最初の2巻は導入の部分ですから話の進みが遅くて、『えっ?これどうやって話を膨らませてくの?』って余計な心配をしながらすこーしずつ、すこーしずつ読み進めていきました。

以下、あらすじや内容に触れていきますので読みたくない方はここで終了してくださいね。



ある中学校の屋上から一人の生徒が転落死をする。雪の降るクリスマスの夜だった。彼はある出来事をきっかけに数ヵ月前から不登校になっていて、世を儚んでいる節があったことから、学校も警察も両親でさえも生徒の死を『自殺』だと断定するが、実は生徒の死は殺人である。私はそれを目撃しましたという怪文書が届く。その犯人とされるのが学校でも地域でも持て余されている札付きのワルで、生徒が不登校となったきっかけを作った人物であった。

その怪文書を元に一人のジャーナリストによって学校がスキャンダルに巻き込まれる。そこで、自分達の学校を守り真相を明らかにすべく3年生の生徒たち数名が立ち上がり不良少年を被告人とした『学校内裁判』が開かれる。
果たして不良生徒は本当に彼を殺したのか?それとも彼は自殺をしたのか?真相を調べ裁判が進むうちに、自体は思わぬ方向に進んでいく……。


ざっと説明するとこんな感じかしら。合ってる?tomoちゃん(笑)

この本は『事件』『決意』『裁判』の三部構成で、それぞれ上下巻からなる、全部で6巻の大作です。
元になる事件は生徒の転落死なのですが、それに絡んで複数の事件が起こります。第一部の『事件』はその発端から枝分かれして起こる事件のお話で、割りとゆっくりと話が進んでいくのでせっかちな私はこの一部を読み切るのに一番時間がかかりました。

第二部は準備や調査など裁判を行うまでのお話で、下巻からだんだんおもしろくなってきました。
そして第三部はいよいよ開廷です。二部で大体お互いが調べた証拠や証人についてもその過程が書かれていたのでどうなるのかなーと思ったらけっこう新しい事実なんかもありまして、『こいつら、知らないところでコソッと調べてやがったなぁ』みたいに思ったりして、気付くとすっかり入り込んでました。


長いだなんだ文句言いましたが、トータルするとおもしろかった。突拍子もない推理があるわけでもないし、事件自体もものすごいサスペンスなわけでもないけど、これだけ入り込んで先が気になるなんてさすが宮部さんです。

半分くらい読んだところで、『あれ?もしかしてこいつアレなんじゃね?』って察しがついちゃったりしますが、まぁきっとそれも計算のうちなのでしょう。

亡くなった生徒の不思議ちゃん具合が私はとても好きで、多分、今そういう子って増えている様な気がしてなんだか思い入れがあったのですが、ラストスパート、最後の最後で彼の本性が暴かれていくにつれ、これはもうどっちにしろどうしようもない事柄だったのではないかとちょっと切なくなりました。

裁判が始まってから真実が明らかになるまでは、事件としては単純(人が亡くなったりケガをしたりはありますが)なのに謎が深まっていく感じに引き込まれていきましたが、蓋を開けてみたら日常にあるちょっとした秘密の積み重ねである気がしました。不良少年が改心するとか、彼に想いを寄せる不良少女の想いが実るとか、お父さんの事件のその後とか、弁護士団の二人のその後の友情とか、そういうのが描かれていないのでひっぱった割りにはあっさりと終わってしまった感が残りましたが、でも結局は日常なんてのはそんなもんだから余計な付け足しはない方がいいんだなと思いました。

しかし、あの中学生達頭良すぎだろ。それで察しが良すぎだろ。証人の何気ない一言や表情で全て悟ってしまうとか、私読んでて説明されてもさっぱりわかんなかったもの。物語の舞台に馴染みのある地名が出てきたりしたので親近感は湧いたけど、あそこら辺にそんなに賢い子供なんかいたか?と怒られそうな事を思ってしまいました。


何だかんだでだらだらとまとまりのない感想になってしまいましたが、物語としてのおもしろさと読み切った達成感も味わえる作品でした。映画も見てみたくなった。


さ、また湊かなえさんの作品を読もう!