世の中の大抵の事は大したことない

なまけものが書きます

『墓地を見下ろす家』を読みました。

f:id:shiomametaro:20180304230408j:plain

*けっこうなネタバレを含みます。長いです。
ヒマな方だけさらっとお読みください。
(個人の感想です)


ホラー好きな私のためにtomoちゃんがくれた本。
くれた?んだよね?(笑)

20代の頃角川ホラー小説が好きで買い漁って読んでいたけど、どれも陳腐な怖がらせる事だけを目的とした小説で、残念ながらどれも私に対してはその目的を達成するだけの力はありませんでした。

私は心理的にじわじわと怖い話が好きです。
どうやっても逃れられない恐怖みたいなのも好きです。そう言った意味ではやっぱり『リング』は怖かったですね。期限を切られている中で助かる術を探すというドキドキ感もありましたし、その方法を発見したって安心したあとの絶望感とか、ほんとに最後まで油断出来ないお話でした。

それに何より、悪者であるはずの貞子の生い立ちが切なすぎて、ただの憎むべき対象ではないと思わせるのがすごいなぁと思いました。

ホラー小説とは言え、やっぱりそこに至るまでの理由がきちんとなされていないと、物語の後半で急に現れた人が犯人でしたみたいな推理小説みたいにモヤモヤしちゃうんですよね。

で、前置きが長くなりましたが、今回のこの『墓地を見下ろす家』。中盤から後半にかけてがじわじわと怖かったです。簡単にストーリーを紹介すると…


過去に傷を持つ夫婦と娘の三人家族が、都心の好物件マンションに越してくる。そこは交通の便も良好で住居スペースも申し分なく広い高級感のあるマンションにもかかわらず破格の値段で売られていた。
その理由はマンションの建つ立地条件にあった。
マンションの三方を墓地、寺、火葬場に囲まれていたのだ。そのせいか14戸ある住居はその半分が空き家でそのわずかな世帯もどんどん引っ越していく。

そのマンションには地下に倉庫スペースがあった。
キレイに掃除が行き届いているが、どこか不気味なただならぬ気配を感じる場所だった。ある住人は「あの地下室には立ち入らない方がいい」と言い残して去って行く。初めは懐疑的だった夫もその地下でいくつかの事件に遭遇し、越してきたばかりの新居から転居する決心をする。

夫婦が引越しを決めてから、それを拒むかのように不可解な事件が立て続けに起こる。それでもなんとか迎えた引っ越し当日、とうとう『それ』は家族をマンションに閉じ込めてしまった。果たして家族は無事にこの呪われたマンションから脱出する事ができるのか?

って感じです。
いやー、このマンションの立地すごいですね。何もないわけが無いっていう。なぜここにマンションを建てた?
物語は初めハッキリとした霊現象もなく、なんとなく不気味な雰囲気を漂わせるだけで進んでいきます。広いマンションの住人が一戸、また一戸と段々減っていって常駐の管理人夫婦と子供を介して仲良くなった家族の三家族が残され、やっと『それ』が動き始めます。そこら辺にきて、この残された家族が本当にこのマンションから出られるのだろうかとドキドキし始めました。

そこからは一気にホラーになります。
なんかもう早く引っ越したもん勝ちみたいな、マンションから離れるまで油断出来ないみたいな、そんなドキドキがありました。
残された家族にはもう絶望しかなくて、一縷の望みも打ち砕かれて、この先どうなるのか?っていう怖さも。

ただね、最初に言いましたけど、『なぜそのマンションにそのような現象が起きるのか』っていう因縁みたいのが全く書かれていないので、ただ単に『運が悪かったね。理不尽だよね。』っていう怖さに終始しちゃってたのが残念でした。

それから表現の仕方がね、例えば件の倉庫に潜む『何か』の表現が『冷たい風が吹く』とか『暗闇にモヤがかかる』とか『不気味な何かがひしめいている』とか、けっこうありがちな表現で不気味さが伝わって来なかった。

引越し業者が扉に近付くと光が差して蒸発しちゃうっていうのも、なんか、ねぇ。円谷プロか!とか思っちゃいました(笑)

できればね、こんだけの絶望しかない状況で、諦めるしかないのか?って時にこのマンションの因果がわかってきてそれを鎮めながら脱出を試みるとか、そんな感じに進んだらおもしろかったのになーなんて作家先生の作品にいちゃもんをつけてみる。

トータルすると、『ただ怖がらせるだけのお話』という印象の本でした。もらった本にいちゃもんつけたみたいになってごめんなさい!いちゃもんじゃなくて感想でした!あ!すぐ上でいちゃもんつけてみるって言っちゃってた💦

ま、いっか。
今本熱が冷めてる期間で、宮部みゆきさんの本がなかなか進まない…おもしろいのに…
と、いうことでまた次の本で!