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世の中の大抵の事は大したことない

なまけものが書きます

【小説】群星のルール(前編)

「はぁ~~~っ」
自分でもびっくりするくらいの大きなため息に、俺は思わず我に返る。いつからここにいるのだろう。

東京の隅っこ、下町と呼ばれるこの小さな町にも幹線道路は走っている。昼間は橋一つ越えた近郊の県から都心へと人々を運んで行くこの道も、夜になれば束の間の休息に入る。そんな通り沿いの8階建ての古いマンションの屋上が俺のお気に入りの場所だ。

本来屋上には出られるはずもないのだが、ここの管理人はどうもやる気がないらしい。
屋上への扉はいわゆる南京錠ってやつで閉じられていてめったに開くことはないが、先月業者でも来たときに開けたのだろう、その後訪れたとき鍵がついたまま放置されているのを発見してこっそり合鍵を作ってしまった。以来一人でぼーっとしたい時はここに来る習慣になっている。

俺はここから自転車で通える範囲の都立高校に通うごく普通の高校一年生。自分で言うのもなんだけどけっこう友達は多いしクラスの中心にいると思う。それなりに高校生活を謳歌してると思うんだけど……最近なんだか自分がとてもつまらないヤツのような気がしてる。これでいいのかなぁってゆうか。ツレはいいヤツであいつといると確かに楽しいんだけどなんかそれだけっつーか。

部活が早く終わればいつものファーストフードで、夕飯前にちょっと小腹を満たしながらくだらない話をする。好きな音楽の事、今度発売される新作ゲームの事、あの胸の大きなグラビアアイドルの事。

毎日繰り返される日常に俺はだんだん疑問を感じるようになった。俺は本当に楽しんでいるのか?こんな意味のない繰り返しの中でなにか得るものはあるのか?本当に俺はあいつらの事を信用しているのか?そしてあいつらはどうなのか?

胸に空いた小さな点は、幼い頃いたずらでチラシに押し付けた線香の火が空けた穴のようにあっという間に広がっていく。そう言えばあのあと見つかってえらく叱られたっけ。

そんな事を考えながら夜空を見上げる。
東京の隅っことはいえ、やはり見上げた夜空に群星を見ることはできない。でも、と俺は思った。
地面から見上げるよりも、こうして少しでも高い場所から見た方が星って見えるのかもしれないな。
そんなくだらないことを思ったら、なんだか余計に自分がちっちゃく思えて堪らず下を見る。
今度は楽しそうに群れながら歩く男女のグループを見つけておっきなため息が出た。

「俺、なにやってんだろ。」

その時、少し離れた場所で誰かが動く気配がした。
誰だ?ここには俺しかいないはずなのに。
俺は音の正体を見ようと恐る恐る身体を起こした。
オカルトは大好きだけど、本物に遭遇するのはごめんだ。

誰かいてくれ。人であることを期待し音の正体を確認する。いても恐いんだけど。
果たして、そこにあいつはいた。
『あぁ良かった。ほんとの人間だ。しかも同い年くらいの。』とホッとしたのも束の間、そいつの行動に俺は思わず走り出した。そいつは手すりを越えて今まさに飛び降りようとしている。